「しくみをみよう」構造目線

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不純異星行為論 002

構造的にものごとを観たかのように書く

不純異星行為論

構造抜きにしては語れない

自ら不純であることを厭わずに生き続ける不純異星行為は、幅広い意味で捉えたデザイン行為である。
その行為が目指す拠り所を得ることにつなげていくためには、
それを支える柱となる構造と向き合わなければならない。
そもそも柱の漢字は木偏に主から成り、家を支える根幹となるものを意味している。
ものの考え方としての構造を考えるときも、
家や建築を成り立たせる構造にたとえると実感を伴った理解を得やすい。

図を体・相・用–構造デザイン概念モデルと名付けている。
建築構造において、構造とは何ぞや?という問いへの答えとして描いた図である。
この図は、その対象を建築に限定せずに、
あらゆるものごとのデザインにも拡げて適用できると考えている。

この図には「荷重」「材料」「力学」「構法」という4つのキーワードを配置している。
その4つに囲まれた真ん中に構造の概念なるものがあると考える。

まず一番下の層に記載した荷重と力学について説明する。

荷重とは、構造物に加わる力のことである。
荷重には、風圧力や地震による影響、屋根の上に積もる雪、床の上に載る人やものの重量などが含まれる。
そもそも、構造物そのもの自体の重量も荷重である。
この地球上に存在するものには、必ず荷重が加わっている。
このことは、そのもの自体の重量も含まれるので当然である。
ものそのものにそなわっているものを属性と呼ぶ。
荷重は、そのものの属性であるといえる。
風荷重や地震荷重も属性なのか?と疑問に思うかもしれない。
それらの荷重も、それ自体が存在しなければ生じないので属性である。
風を遮ることがなければ風荷重は生じない。
重量がなければ地震の影響を受けることなく地震荷重も生じない。
そこにあるからある。なければない。というものが荷重なのである。
存在する限りは逃れようのないもの、それが荷重である。

力の影響を受けて、ものには力の負担が生じ、変形する。
そういうことを捉えるための思考のための武器、それが力学である。
力学を用いれば、ある荷重が作用したとき、どのようになるのかということが想定できる。
設計するときには、力学の助けを借りて、
形にするまえに、起こりうることを予測することができる。
この荷重に対して力学という武器で対応するという思考は、ものごとの原理原則を探究することに相当する。

次に真ん中の材料と構法が記述された層について説明する。

材料がなければ、ものは存在し得ない。
そのものを構成する材料はさまざまであるが、
何からできているかということが、そのものの特徴に大きく関係している。

また、
さまざまな材料を組み合わせて構造物にするためには、
その作り方、構法を検討しなければならない。

この層で要求される思考は、
どのような材料を用いて、それら材料をどのように組み合わせるかということを検討し、決断することである。
試行錯誤を繰り返す中で、失敗の経験を積み重ねていくことで、
より良いものが作られていくという場合も多くある。

構造デザイン概念モデルでは、
一番下の層に「体」、真ん中の層に「相」とう漢字を充てている。

これは次の本で示されている分類方法に従っている。

『分ける」こと「わかる」こと 坂本賢三』
坂本賢三 著 講談社学術文庫

1982年に講談社現代新書として出版されていたものが、現在、講談社学術文庫として出版されている。

この中で、
古くから仏教にあった体・相・用の三つの面からとらえる仕方が紹介されている。

その3つは、それぞれ、「そのもの」「見える姿」「はたらき」に対応していると筆者は述べている。
坂本によれば、これらの語が用いられたのは『大乗起信論』が最初だと思われるとのことである。
坂本は「限りない示唆を与えるこの三つの枠組みは、もっと見直されても良いのではないかと思う。」と記述している。

この体・相・用の三つの面からとらえる仕方を、
構造デザイン概念モデルの3つの層に一致する形であてはめることができる。

一番下の荷重と力学の原理原則は、「そのもの」を思考する「体」に相当する。
真ん中の材料と構法を考えて形にすることは、「見える姿」である「相」を考えることに他ならない。
そして、
最終的に形あるものとし存在するもの、建築構造であれば建築そのものが「はたらき」を具現化した「用」に対応したものであると考えることができる。

この図が示す3つの面について重要ことは、
一番下の荷重ー力学の関係を示す軸方向と材料ー構法の関係を示す軸方向が、
平行ではなく、ねじれの位置にあるという点である。
高さレベルも別であるが、実体あるものが理想的なモデルにそのまま置き換わるものではないということを端的に示している。
一番上の「用」の層から下を眺めると、「荷重」「材料」「力学」「構法」という4つのキーワードが取り囲む形で、中央の空白があるという図になっている。
「はたらき」として最終的な形を示す「用」は、ねじれの位置関係にある「体」と「相」の両者を踏まえた上でつくりあげられるものとして捉えることができる。

建築構造において、構造とは何ぞや?ということを考えて描いたモデルであるが、
対象は建築のみならず、広くデザイン全般、社会生活全般にも適用できる。

「体」の原理原則、実情等向き合うレベルの「相」、ねじれの位置関係にある二つの層をつなぐ形で最終形としての「用」をつくりだす。
この過程がデザインするという行為のプロセスだと考える。
不純異星行為の方法について考えていく際に、このモデルが表現するイメージを参照していくことにする。

ここまで、考え方の柱となる構造の概念を示す図について説明してきたが、
「荷重」「材料」「力学」「構法」の4つのキーワードで囲まれた真ん中の何もない部分にそれが相当するということが、とても面白いと思っている。

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