正法眼蔵(四)
全注訳 増谷文雄 講談社学術文庫
正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)の中に画餅(がびょう)という一巻があります。
画餅すなわち絵に描いた餅です。
絵に描いた餅という言葉は、
絵に描いた餅は現実の餅ではないので食べられないという意味で理解していましたが、
そうではないことが説かれています。
『ただまさに尽界尽法は画図なるがゆゑに、人法は画より現じ、仏祖は画より成ずるなり。』P.257
現代語訳は、
『つまるところ、この世界もこの存在もことごとく画図であるのだから、人も存在も画によってあらわとなるのであり、仏祖もまた画によって成るのである。』P.261
この巻が制作されたのが1242年と書かれています。
今から800年ほど前に、道元はすでにこのようなことを考えていたということです。
恐るべし道元禅師としか言いようがありません。
通読して容易に理解できる本ではないし、
この一巻に書かれていることすら自分の言葉で説明せよと言われると難しいのですが、
人は概念でものごとを捉えているのだということを認識できます。
「表現とは何か?」という問いに向き合っている人には、ぜひ読むことをお勧めします。