「しくみをみよう」構造目線

絵空ごと , 創作物語

色づいた街(超短編)

「プロジェクションマッピング、この技術のおかげで空しさから逃れられている気がするね。」
「少ないエネルギーで、これだけの規模の街を演出できる技術、人類の英知の素晴らしさに感謝するしかありませんね。」

街を見渡すことのできる展望デッキで、コーヒーを飲みながら、昨日も同じような会話をしていたような気がした。
建物すべては、薄ぼけた灰色なのだが、その建物群、そして道路までもがスクリーンとなり、色とりどりの演出がなされている。

「色の演出力には、形を超えるものがあるね。」
「世界がこれほどまでに色あでやかになるということは、色そのものが形なのかもしれませんね。」

こういったやり取りを毎日繰り返しているような気がする。

かつては、このような仮想世界を映し出すような演出がなくても、街そのものが色づき、活気づいていた。
そもそも建物そのもの、そこに取り付けられた広告看板など、とりとめもなく、うるさいぐらいに感じられた時代が長く続いていた。
しかし、ある大きな出来事、それは事件、事故と呼ぶだけでは説明しきれない、ある出来事をきっかけに世界がすべて灰色になった。
灰色の街を前に呆然と立ち尽くさざるを得ない日々を数日間過ごす中、プロジェクションマッピングの機能が稼働できる状態であることを発見した。
ひたすらプログラミング作業を続けて、街を演出する映像を作り上げていった。
二人はひたすらその作業を何日も続けた。
ようやく完成して一斉にプログラムを起動すると、灰色の街全体は、色あでやかな世界に変わった。

「我々のおかげで、街は色づき、活気を取り戻しましたね。」
「みんな楽しそうに過ごしているじゃないか。」
映し出された色であるにすぎない、行き来する人々の映像を見ながら、二人は、今日もコーヒーを飲んでいた。

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