石は匠と専門学校の同期生である。
関西のかなり人口の少ない地方都市で工務店を経営している。
一人で経営している匠とは異なり、石が経営している工務店は人数規模、売り上げも大きい。
店主:匠
俺なんか一人でやってるけど、社員をたくさん抱えて経営してるって大変でしょ?
客:石
経営者としての責任感に対して、俺は、なんか根拠のない自信があるんだよね。
そもそも、契約社員の立場だったときに経営者になったぐらいだからね。
店主:匠
それがすごいよ。
客:石
他の社員の皆んなも、頑張りがいのある会社だと思ってくれている気がするよ。
店主:匠
工務店の経営者として、強く思うことってある?
客:石
最近思うのは、家の寿命が結構長いってことなんだよね。会社の経営体制の変化に比べれば、家の寿命の方が長い気がする。なので、会社自体がしっかり存続してくことが、家のメインテナンスとかを考えても重要なんだよ。
店主:匠
確かにそうかもね。
客:石
なので、会社そのものが持続していく形にするために、若い人をしっかり採用していくことを強く意識しているよ。
店主:匠
俺の場合は、一人だから、俺が仕事を続けていけるところまでが限界だねえ。
客:石
一人の場合は、それ以外の選択肢はないんだろうけど、中小といっても会社の形で関わっている限りは、その組織そのものを残してお客さんと付き合い続けるっていいう姿勢は大事だと思うんだよね。
店主:匠
そうか、社長自身も会社の構成員の一人なんだって感じだね。
客:石
そうそう、そもそも契約社員がいきなり経営者になっちゃってるからね。
土曜の夜、ケヤキの一枚板のカウンター越しの対話はまだまだ続く。