相見積もりへの対応【山と神②】

仕事の話

山は店主の匠と同じ専門学校の卒業生で2年先輩になる。
初来店から1ヶ月ほどして、神とともに再び訪れた。
神は山と専門学校の同期で、都内で工務店を経営している。
3人とも、学校で大工技術を学び、建築の勉強をしていたが、
卒業後すでに30年ほどが経っている。

施主が業者選びをする際に、複数の業者から相見積もりを取って、
その結果からどの業者を選ぶことなる。
その相見積もり話に及んだ。

客:山
客:山

匠は相見積もりってどうしてるの?

店主:匠
店主:匠

相見積もりは嫌ですねえ。お客さんが言ってきても、他の業者と競争する気はないですよ。

客:山
客:山

実際はどうなのかということ、
その見せ方をどうするかということ、
契約前に何をどう伝えるかって、結構難しいんだよね。
うちの場合は、
仕事を請けた後のお客さんとの関係が大事だと思ってるので、
基本的に金額だけ勝負の相見積もりには乗らないようにしているよ。

店主:匠
店主:匠

私の場合、ほぼ紹介からの契約なので、まず相見積もりはやりませんよ。

お客さんが相見積もりをする理由って、

どの業者が信用できるか?
その業者が、自分の希望を組んで誠実な仕事をしてくれるかどうか?
っていうことを確認したいような気がするので、
結局のところ、その人の人間性が見られている感じがしますよ。
どう言うふうにお客さんとセッションできるかってことが大事で、

施主も工務店もフィフティーフィフティー。

仕事やらしてやってると言う客とは仕事しないことにしています。

打ち合わせしている人間が現場で叩く(施工する)っていうのが、

強みかもしれないって思いますね。

客B:石
客B:神

建築の仕事に何が必要かって、お客さんへの説明力は大事だよね。

どうしたら仕事を獲得できるかは話術だし、
相見積もり10社だったりすると、
どうしたらそのお客さんの心を掴めるか?が勝負だよ。

店主:匠
店主:匠

相見積もり10社なんてこともあるんだあ。

客:山
客:山

いやいや、全体だと紹介が8割ぐらいだよ。
自分も設計から施工まで全部やるタイプなんで、

ただただ最初から相見積もりを出せと言われても出さないことにしているよ。

そのかわりに、どうしたらお客さんが納得のいくものを提案できるか?
ってことをさんざん考えた上で、お客さんに伝えることにしているよ。

それこそ、朝4時からスケッチ描いたりすることもあるからねえ。

店主:匠
店主:匠

相見積もりだと、大手メーカーと勝負しないといけなかったりしますよね?

客B:石
客B:神

知名度が高い相手と戦ってどう勝てるか?ってことなんだけど、
そういったメーカーの営業の人って、
経験を踏んでいない若い人が結構多かったりするんだよね。

なので、色々な部分の納まりが分からない人が多い気がする。
そうすると私みたいに施工まで自分でできて分かっている者が、
信用されるっていう気がするよ。

客:山
客:山

大手か中小かって違いじゃなくて、
結局はどんな仕事ができる工務店か?
っていうブランド力みたいなものがある気がするね。

店主:匠
店主:匠

どういうブランド力を示せるかってことですね。

客B:石
客B:神

この間、初めて山の事務所に行ったんだけど、その内装なんかもいい感じで、デザイン性豊かな空間を提案できることが、事務所の雰囲気からも伝わってくる感じだったねえ。

客:山
客:山

事務所そのものも展示場の役割を果たすからねえ。

店主:匠
店主:匠

このバーなんかも、どうです?

客B:石
客B:神

いいよ。このカウンター。

客:山
客:山

さりげなく、照明なんかもいい感じだしね。

土曜の夜、ケヤキの一枚板のカウンター越しの対話はまだまだ続く。

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