親父の跡を継ぐ 【山と神①】

あれやこれやと

山は店主の匠と同じ専門学校の卒業生で2年先輩になる。
初来店から1ヶ月ほどして、神とともに再び訪れた。
神は山と専門学校の同期で、都内で工務店を経営している。
3人とも、学校で大工技術を学び、建築の勉強をしていたが、
卒業後すでに30年ほどが経っている。

客:山
客:山

今夜はお客さん連れてきたよ。

客B:石
客B:神

こんばんは

 

店主:匠
店主:匠

こんばんは。いっらしゃいませ。えっーと、山さんと同級生の方でしたっけ?

客:山
客:山

そうそう。野球センス抜群。時間を惜しむことなく学校時代に作業し続けて大工技術も磨いていた奴だよ。いまだに学校で重宝がられてイベントなんかで展示されている斗組の模型を作った奴だよ。

店主:匠
店主:匠

背も高かったし、何となく覚えてますよ。あの模型、そうでしたね。

客:山
客:山

彼は二代目で親父さんの跡を継いで都内で工務店経営しているんだけど、久々に会って、富士山を見ようってことになって、朝霧高原に行った帰りにちょっと遠回りして立ち寄ってみたよ。

客B:石
客B:神

なかなか、いい店だね。

店主:匠
店主:匠

ありがとうございます。週一で土曜の夜しか開けてないですけどね。

客:山
客:山

神はなかなかのやり手だよ。親父さんの跡を継いでるっていっても、ここまで楽じゃない道を通ってきている。

店主:匠
店主:匠

確か、学校を卒業してすぐに誰か親方のところへ弟子入りしたんじゃなかったんじゃ?

客B:石
客B:神

それがねえ。厳しいというか何というか。今じゃ考えられないけど、ちょっとしくじると大工道具が飛んでくるしねえ。何だかんだで、肋骨も合わせて6本は折ったよ。

客:山
客:山

この神が根を上げたぐらいだかた普通じゃないよね。

店主:匠
店主:匠

それで、そこをやめたんですか?

客B:石
客B:神

それですぐに親父の会社で仕事をするようになって今に至ってる。

客:山
客:山

でも、会社も大変だったんだよね。赤字額は言えないけど桁違い。なかなか利益が上がってなかったそうでねえ。

店主:匠
店主:匠

俺なんか自分一代でやってますけど、継げる会社があるっていうのも大変そうですねえ。

客B:石
客B:神

親父のやり方を変えつつ、ここまで来たって感じだね。それこそ当時は、会社を残すか残さないかって、かなり悩んだけどね。でも、ここまで続いてきたもの看板そのものを残す意義があると思ってね。今になっては、正しい判断、そこから頑張って良かったと思ってるよ。

客:山
客:山

俺も、一時は親父の会社を背負っていたけど、仕事で親父と関わり続けるって結構難しいなって感じてたよ。最近は親父とも仲良くやっているけど、仕事の話をしなくなったからいいのかもって、思ったりしているよ。

土曜の夜、ケヤキの一枚板のカウンター越しの対話はまだまだ続く。

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