島と辰は、匠と同じ専門学校の卒業生で2人は同級生、匠は彼らの3年先輩である。
学年が離れていたため、在学中には2人と匠との交流はあまりなかった。
3人とも40歳を超えて、50歳に近づきつつある年齢である。
客A:島
最近、材木の値段が上がってますよねえ。
店主:匠
経営が厳しい材木屋なんかもあって、そういう材木屋から一括で買うこともあったりするよ。
客B:辰
基本は同じ材木屋から仕入れている感じですか?
店主:匠
そうだね。
客B:辰
俺も、材木屋の浮気はしないって決めてるんですよ。
店主:匠
結局は信頼関係が大事でしょ。
客B:辰
そうなんですよね。その時々で、できるだけ安いものを仕入れるというような発想自体がダメな気がします。
店主:匠
全てが同じ製品って訳じゃないからねえ。
客B:辰
そうなんですよ。
しかも、必要になったときに必要な分を確保できるかどうかっていうことが重要ですからねえ。
客A:島
やはり信頼関係がないと、その辺りのやり取りができないからねえ。
客B:辰
インターネットのサイトで、簡単に値段を比べることができて、最安値のものを選んだりするけど、材木はそうはいかないって気がしますよ。
店主:匠
安ければいいって訳じゃないでしょ?
客B:辰
お客さんにも、材木がどこれもこれも品質が変わらない工業製品じゃないってことを説明して、理解してもらうようにしてますよ。
客A:島
木目は違うし、節はもちろん、割れのあるなしとかもねえ。
客B:辰
どういう材木を使っているかということも、お客さんには伝えたりしているよ。
店主:匠
そう、やっぱり値段が安ければ良いって話にはならないよね。
土曜の夜、ケヤキの一枚板のカウンター越しの対話はまだまだ続く。