どんと構える。【島と辰①】

仕事の話

島と辰がやってきた。
島と辰は、匠と同じ専門学校の卒業生で2人は同級生、匠は彼らの3年先輩である。
学年が離れていたため、在学中には2人と匠との交流はあまりなかった。
3人とも40歳を超えて、50歳に近づきつつある年齢である。
この居酒屋で提供している純米吟醸は、
島の知り合いの蔵元から取り寄せているものである。
酒の納品の仲介はしたもの、島も来店は初めてである。

客A:島
客A:島

やっぱりこの酒は美味いですよねえ。

店主:匠
店主:匠

淡白ではない辛口で、ほんといいよ。紹介してくれて感謝しているよ。

ところで、ほぼ初めましての辰さんは、どんな仕事しているの?

客B:辰
客B:辰

隣の県で親の跡を継いで工務店やってます。

店主:匠
店主:匠

どう景気は?

客B:辰
客B:辰

最近、仕事がやっと落ち着いていい感じになってきました。

店主:匠
店主:匠

前は大変だった?

客B:辰
客B:辰

ある時期は、仕事が重なってやけにい忙しかったんですけど、

そこから社会情勢の影響もあってかピタッと仕事が止まっちゃって、

店主:匠
店主:匠

先のことを見越していかないとね。

客B:辰
客B:辰

そうなんですよね。

で、ガツガツしてもダメだということに気づきました。

客A:島
客A:島

何か気づいたきっかけでもあった?

客B:辰
客B:辰

ある時期、展示場にも出ていたんですけど、どうアピールするか迷ってたんだよ。

客B:辰
客B:辰

で、お客さんに自由に見ていただくだけにして、余計な説明をしないようにしてみました。

店主:匠
店主:匠

そうすると違った?

客B:辰
客B:辰

お客さんが、他のメーカーの住宅を一通り見てきた後で、もう一度立ち寄ってくれたりするんですよ。

あちこちでいろんな説明をされたけど、どうして良いか分からず、

なんの説明もなかったことで、もう一度しっかり見て話を聞きたいと思ってくれたみたいです。

客A:島
客A:島

そうだよね。メーカーの営業の人って、それが悪いとは思わないけど、とにかくいろんな説明してくれるからねえ。

客B:辰
客B:辰

もう一度戻ってきてくれて、改めて話を聞こうと思ってくれているお客さんには、こっちも日頃から自信を持って建てているので、しっかり説明できるんですよね。

土曜の夜、ケヤキの一枚板のカウンター越しの対話はまだまだ続く。

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