「しくみをみよう」構造目線

「うけとめていく」デザイン

ふるまい学が「うけとめていく」デザインの基盤なのかも

参考図書
・How is Life? - 地球と生きるためのデザイン Design of Earth
   監修 塚本由晴 千葉学 セン・クアン 田根剛 TOTO出版 2023年
・動いている庭 ジル・クレマン 山内朋樹 訳 みすず書房 2015年

 2022年にTOTOギャラリー間で開催された『How is Life? - 地球と生きるためのデザイン』
その展覧会の記録集が出版されている。そこには、建築という枠組みに収まりきらないデザインの取り組みが集められており、日常の生活空間や地域と向き合ってどのようなデザインがなされていくのかという具体的なプロセスが数多く示されている。監修者の一人である塚本が「ふるまい学」について触れている箇所に『ふるまいに下りていかない設計には、全然興味を持てなくなりました。』(P.148)と語っている一文が掲載されている。その語りの中で、『動いている庭』にも触れていて、これもまた、ふるまい学的であると指摘している。草花に良いも悪いもなく、さまざまな植物の絡み合いをうけとめていく庭づくりが、動いている庭の基本的な考え方であるように思える。
 「うけとめていく」デザイン、とりわけ「うけとめていく」構造デザインを考えていくにあたって、次の一文は、非常に示唆に富む。『構造物にとっての虚、すなわち構造物が築かれていない部分は、生物に満たされ、動きがある。言い換えるなら、それが庭の実質である。』
 塚本は、ブルーノ・ラトゥールの「アクターネットワーク」に啓発されて『産業社会から与えられた条件の中で設計するだけでは、良い社会になっていかないだろう。』(P.150)という認識を持っていると語っている。「小さな地球プロジェクト」について、『空き家と耕作放棄地だらけなので、教わりながら自分たちでやるしかない。』(P.166)という状況下での取り組みを「フィールドサーベイ」ならぬ「フィールド・ラーニング」と塚本は呼んでいる。それは、まさしく「うけとめていく」デザインだと思う。

「うけとめていく」デザインをキーワードにして、考えていることを少しずつ記述していきます。
その前書きはこちら→ 試論:「うけとめていく」デザイン連携活動

「うけとめていく」デザインを英語に翻訳する場合
次のようなフレーズが適切であると考えています。
“Design that embraces the way things are”

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