「しくみをみよう」構造目線

「うけとめていく」デザイン

都市のありようを「うけとめていく」

参考図書
・スマートシティはなぜ失敗するのか 都市の人類学 
 シャノン・マターン 著 依田光江 訳  2024年 早川新書034
ISBN 978-4-15-340034-4

 著者のシャノン・マターンの専門分野は、都市論やメディア論、デザイン人類学であると解説に記載されている。
 スマートシティの管理をするダッシュボードの役割について懐疑的な見方を示して、都市とのあるべき向き合い方をこの本は教えてくれる。
 とりわけ第四章の『メンテナンス作法』の中で『支配的なパラダイムとして「メンテナンス」を「イノベーション」と競わせるにあたり、私たちはまず、より大きな公共の舞台を構築する必要がある。』との主張には大いに共感できる。「メンテナンス」の研究分野が刺激的であるとの説明で『学問と実践のあいだの境界線があいまいだからだ。メンテナンスを研究すること自体がメンテナンス活動だと言える。文献の隙間を埋め、異なる分野間のつながりを見いだすことも、修繕の行為、単純に言えば丁寧にケアすることであり、糸をつなぎあわせ、穴を繕い、聞こえにくい小さな声を増幅することなのだ。』と書かれた文章そのものが刺激的に感じられる。また、地理学者のケイトリン・デシルベイの言葉として紹介されている『誰のために保全しようとしているのか ー 保全活動にはしばしば、他の種や広い生態系と関連するさまざまな人間のコミュニティへの配慮が必要になる ー を自問するように、さらに、必要に応じて「管理された衰退」を受けいれる姿勢の育成もたいせつだ』という一文は、対象を認識する視野を広く持たなければならないことを強く思わされる。
 終章では、『「反」ダッシュボード、あるいは「野生の」ダッシュボード』といえるような取り組みを紹介して締めくくられている。都市において「うけとめていく」デザインのあり方が示されている本のように思える。

「うけとめていく」デザインをキーワードにして、考えていることを少しずつ記述していきます。
その前書きはこちら→ 試論:「うけとめていく」デザイン連携活動

「うけとめていく」デザインを英語に翻訳する場合
次のようなフレーズが適切であると考えています。
“Design that embraces the way things are”

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