参考図書
・複数性のエコロジー 人間ならざるものの環境哲学 篠原雅武 著 以文社 2016年
ティモシー・モートンは1968年ロンドン生まれで2007年に『自然なきエコロジー』が刊行されているとのこと、篠原はモートンの人文学的環境学の読解と解釈をこの本の目的にしていると記している。モートンと直接的に対話する経験も踏まえて書かれている本である。
モートンが自らのエコロジーをダークエコロジーと名づけていることについて篠原は、『モートンは、すでにこの世は不浄であり、荒んでいること、もはや後戻りできない水準に達していること、そしてこの不浄な世を私たちが生きてしまっていることをまずは認めてかかろうとする。』という思想から展開されていると述べている。
『第6章 内的空間へ』の中で篠原は、『生きられる空間は、人間身体に限定され得ない。それはまた、人間ならざる存在の身体によって生きられ、棲みつかれている。』と記述しており、モートンの廃墟空間の概念において、『人間存在をも含めた多数の事物は、荒廃しつつも空虚な空間に位置付けられその中で共存し始める。』と述べている。終章で篠原は、『外の世界を意のままにするのではなく、わたしの内部、内的空間の中に、陸地を、海を、世界をつくる。つくられた世界が、わたしの内的空間から出てくる。たくさんの「わたし』たちがつくりだす世界が溢れ出てくる。』という経験をし始めていると感じていることを記して締めくくっている。
モートンの読解により篠原が捉えている世界の見え方は、「うけとめていく」デザインを意識することによる見え方にかなり近いものであるように思える。「うけとめていく」デザインの姿勢は、さまざまなものを「うけとめていく」ことにより、個人個人の意識にとどまることなく環境と関わり、その関わる行為によって自分自身が外に開かれていく存在となって、自らのおかれている環境そのものをどうデザインしていくかということを常に考え続けていくことのように思えてくる。
「うけとめていく」デザインをキーワードにして、考えていることを少しずつ記述していきます。
その前書きはこちら→ 試論:「うけとめていく」デザイン連携活動
「うけとめていく」デザインを英語に翻訳する場合
次のようなフレーズが適切であると考えています。
“Design that embraces the way things are”