「しくみをみよう」構造目線

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激甚化する気象災害に対して建築は何が出来るのか

激甚化する気象災害に対して建築は何が出来るのか ─実大ストームシミュレータの実現に向けて

97日㊋ 9:0012:00

2021日本建築学会大会 1日目の午前中です。
大会のプログラムは日本建築学会のWEBサイトで確認できます。
また資料のpdfはオンラインで購入することができます。

http://taikai.aij.or.jp/2021/

実大ストームシュミレータという巨大な風洞実験装置があれば、どのような研究が進むかということを、
さまざまな分野の方々が提言されていました。

気に留めてメモしたことを列挙しておきます。

・高機密でベタ基礎の住宅が洪水の際に建物そのものが浮くという事例がある。
・近年、被災した際の経済損失がこれまでよりも大きい。
・長尺鉄板の屋根が熱応力の影響で止めつけているファスナーが疲労している場合がある。
・洪水や津波に関しては、浸水の高さだけでなく、流速にも着目する必要がある。
・住宅の耐水性については、さらに考えていくべきかもしれない。
・シミュレーション研究が進めば、規格化や条件化につなげていける。
・雪の後に雨が降ると、雪荷重としての重量が増大するので注意が必要である。

電力関係
・電線については、冠雪と風荷重を同時に考える必要がある。
・電線同士がぶつかって接したために短絡する現象が起きる。
・太陽光パネルについて、風で飛んでしまうことだけでなく、飛来物で割れる被害もある。
・風力発電の風車では、ブレードの着氷が問題になることもある。

鉄道分野
・風洞実験では縮尺模型の限界がある。が妥当であるか。
・地形の影響なども含め、実大で行えることが望まれる。
・突風の影響をどう扱うか?難しい。
・ドップラーレーダーで竜巻上の渦を探知して突風予測する方法など研究が進められている。
・規制風速値の妥当性を高めていくことを目指す。

(規制値風速が車両の転倒モーメントで決まる話が個人的に面白かったです。)

・竜巻の風洞実験なども実大ストームシュミレーターがあれば行える。
「実物大」で「実測」 安全性の訴求につながるのではないか?

農業
ビニールハウスについて基礎部分は表層の土を利用している。
(タイプごとの特徴が示されていました。)

森林
風と樹木全体を捉える必要性が紹介されていた。

PD
・強風 雨と風 同時
・風そのものが近年、強くなっている
・浮く住宅 水の流れと風の影響、移動について考慮する必要がある。
・建材 雨でプラスターボードが濡れたのち、風の影響を受ける場合がある。
・被害実態の把握だけでなく、
まだ起こっていない被害に対する危険性の予測がどこまでできるか?
それにどう取り組むか?ということが重要である。
・被害軽減について、自分がやるとコストがかかるということに対して、
誰がイニシャティブを取るか?ということが問題である。
・アメリカのシュミレータは保険会社が活用していて、
保険料率を上げるか?リスクを下げるか?という検討に用いているとのこと。
・リスクの低い建材で建てさせるインセンティブをどうするかという問題。
・住宅性能評価制度などを金利優遇を性能に関連づけることが良いのかもしれない。
・外装材 耐水性も性能表示できれば良い?

このパネルディスカッションでは、
さまざまな分野の方の話が聞けたことが特に有意義でした。

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