「しくみをみよう」構造目線

構造力学の教科書 第8回 トラス構造

トラス構造

接合部がピン接合であっても部材を三角形で構成すると形が保持できる。
このような構造物をトラス構造と呼ぶ。
https://youtu.be/fkWyS5JnyBU

デザイン学科卒業生の大橋一輝さんが卒業制作で取り組んだ
トラスの断面力を感覚的につかむための動画「見えてなるほど三角形」へのリンクはこちら
https://youtu.be/olXsRQGjNCE

ナレーションのない動画の補足

■ピン接合された箇所では曲げモーメントを負担できない。
■たとえば長方形の角をピン接合にすると横からの力に対して抵抗することができない。
■2本の斜めの材の頂点をピン接合にしてみる。
■頂点に上から荷重作用したとき、固定されていなければ足元が広がる。
■その足元を部材でつないで三角形にすると足元が広がらずに、頂点の荷重を支えることができる。
■このとき、斜め材には圧縮力、足元の部材には引張力が生じている。
■接合部がピン接合で曲げモーメントに抵抗できないため、両端がピン接合された部材には途中に力が加わらない限り、曲げモーメントが生じない。

解説

トラス構造の部材には、中間に荷重が作用しなければ曲げモーメントが生じない。
生じるのは圧縮が引張の軸力のみである。
部材が曲げモーメントに抵抗する場合、断面の中央部分は抵抗する役割をあまり果たしていない。
しかし、軸力に対しては、ほぼ断面全体で抵抗する。
効率よく力に抵抗するため、軸力のみに抵抗する部材の方が、曲げモーメントに抵抗する部材より一般的に小さくすることができる。

梁トラス その1 その2

梁トラスの部材の断面力を計算するための計算方法を学ぶ。
その1 片持梁の形式
https://youtu.be/UxSvp1TBXAs
その2 単純梁の形式
https://youtu.be/EdTYt21gpqY

ナレーションのない動画の補足

■まず、計算したい部材のある箇所を途中で切断した形を想定する。
■想定で切断した部材に軸力の矢印を書き加える。
このとき、断面から出る向きに矢印を描くことにする。
この矢印の向きは、部材を引っ張っている状態を示す。(仮にこの向きにしておく)
■最初の式
切断した形に書き加えられている矢印で縦方向の矢印だけに着目して、
上向きか下向きかどちらかを正の向きと決めた上で、力の釣合式を書く。
■2番目の式
切断した形に書き加えられている矢印で横方向の矢印だけに着目して、
右向きか左向きかどちらかを正の向きと決めた上で、力の釣合式を書く。
■3番目の式
回転の中心を決めて、右回りか左回りかどちらかを正の向きと決めた上で、回転の力の釣合式を書く。
■これら3つの式を解けば、計算したい部材の断面力3つを求めることができる。

解説

回転の力の釣合式を書くときに、
どこを回転の中心にするかによって、計算の手間が変わる。
回転の中心を通る力は、(中心からの距離が0であるため)式に書き連ねる必要がない。
このことを考えて、回転の中心を適切に選ぶと計算が楽になる。

建築士の試験などでは、求めることが要求されている力を計算するための式のみあればよく、
3つの式を書き連ねる必要がない問題が出題されることもある。
どの式が必要なのか見極めるコツを知っておくことが解答時間の節約につながり、
受験対策上、有効である。

演習

次の片持梁の形式のトラス構造の斜材の断面力を求めてください。

 

 

 

次の単純梁の形式のトラス構造の斜材の断面力を求めてください。

 

 

 

梁トラス その3

梁トラスの斜め材は、その向きに応じて圧縮力または引張力が生じる。
形を見ただけで、圧縮力か引張力のどちらが生じているのか見極められるようになっておきたい。
https://youtu.be/epxS53yjMzk

ナレーションのない動画の補足

■単純梁の例で考える。中央部分で両側を切断した形を想定する。
■上からの荷重に対して釣り合う力が斜め材に生じるものとして考えると
斜め材の軸力の矢印の向きが直感的に分かる。
■断面から矢印が出ていく向きが引張、その逆が圧縮なので、
矢印の向きさえ分かれば引張か圧縮か判断できる。
■さらに外側を切断した場合も想定してみる。
中央側で切断した場合よりも、上からの荷重が大きな分だけ、斜め材の軸力が大きくなる。

解説

部材に引張と圧縮のどちらの力が生じるかということを見極めることはとても重要です。
引張の場合には、接合部を引張力に対して耐える仕様にする必要があります。
(変形が大きすぎても困るので、そのチェックも必要です。)
圧縮の場合には、部材が突然曲がる座屈という現象が起こさないだけの断面が必要になります。

斜め材がなく長方形が連続する形の梁があり、
提案者の名前からフィーレンディール梁と呼ばれています。
トラス構造ではないにもかかわらず、
フィーレンディールトラスと呼ばれもしています。

参考図書

ここで示した考え方が次の本に書かれています。
力学的なことを直感的に学べる良書です。

建築の絵本 建築構造のしくみ 第二版 力の流れとかたち
川口衞・阿部優・松谷宥彦・川崎一雄 著
ISBN:978-4-395-32015-8
2014年06月
彰国社のサイト https://www.shokokusha.co.jp/?p=820