「しくみをみよう」構造目線

構造力学の教科書 第6回 剛接合 両端固定梁 連続梁

剛接合 その1

剛接合の箇所では曲げモーメントが伝わる。
途中で剛接合された片持梁の形式の構造について考えてみる。
曲げモーメントは力と距離を掛け算して算出するものなので、
距離が変わらない箇所では、一定の値のままになる。
https://youtu.be/Bp1iE9sj4us

ナレーションのない動画の補足

■L字形に曲がった構造物について考える。曲がった部分は直角を保つ剛接合であるものとする。
■荷重が加わった箇所から剛接合の部分までは片持梁とみなせる。
■縦の柱は途中のどの部分も荷重が加わる箇所からの距離は一定である。
■距離が変わらなければ曲げモーメントは一定である。
よって図に示すような曲げモーメント図になる。
■荷重の向きが逆になった場合についても考えてみる。
■曲がり方が逆になるため、梁の部分の曲げモーメント図が逆になる。
■剛接合の部分での曲げモーメントも逆になるため、
柱の曲げモーメントも逆の側に描く形になる。

解説

途中で剛接合された箇所があって曲がっていようとも、
1箇所で剛な形で支えられている構造物は片持の形式である。
支持された箇所の反力の曲げモーメントの大きさは、
荷重の矢印が通る作用線からの距離で決まるので、
その距離については、惑わされることなく見極めなければならない。

剛接合された骨組のことをラーメン構造と呼んでいる。
ラーメンはドイツ語のrahmenをカタカナで表したものである。
rahmenは骨組、枠、額縁というような意味のドイツ語である。
英語ではframe、剛接合された骨組をはっきり言い表す場合には、
rigid-jointed frameと示されることもある。

剛接合 その2

キャンティレバーの曲げモーメントについて考えてみる。
実際椅子の形状と曲げモーメント図を対応させて考える方法に触れる。
https://youtu.be/LoHC2Qd2DH8

ナレーションのない動画の補足

■キャンティレバーチェアに座ったとき、座面に座る人の体重が加わる。
(この椅子は座面のフレームから肘掛けのフレームに力が伝わっている。)
■キャンティレバーチェアは剛接合されたフレームがコの字の形になっている。
■曲げモーメントの様子を推定すると曲げモーメント図が描ける。
■背もたれに、もたれかかる力が加わることも想定する。
■背もたれに加わる力によって生じる曲げモーメントを推定すれば、
そのときの曲げモーメント図も描ける。
■座面に体重が加わり、さらに背もたれにも力が加わるときの曲げモーメント図は、
それぞれの場合の曲げモーメント図を重ね合わせて描くことができる。

解説

曲げモーメント図からも分かるように、
キャンティレバーチェアの鋼管で一番曲げの負担が大きいのは、
直角に曲がる箇所である。
その部分が生じた曲げモーメントに抵抗できれば、この椅子の形は成立する。

両端固定梁

両端が剛に固定された梁を両端固定梁と呼んでいる。
両端がピン支持の単純梁とは異なる曲がり方をする。
どのように異なるのか、曲げモーメント図の違いからも理解できる。
https://youtu.be/pcudbaUjvB0

ナレーションのない動画の補足

■まず、単純梁に集中荷重が作用した場合について考えて、その曲げモーメント図を描く。
■単純梁は両端がピンなので、両端の曲げモーメントはゼロになる。
曲げモーメント図の途中は直線で、荷重が作用している箇所で曲げモーメントは最大になる。
■次に両端固定梁に集中荷重が作用した場合について考える。
両端が固定されているので、そこに曲げモーメントが生じる。
■上から作用した荷重に対して、両端部は上側が引張、中央は下側が引張になる。
■両端固定梁の曲げモーメント図は、単純梁の曲げモーメント図の両端が引き上げられた形になる。
■両端で引き上げられた分だけ、中央部の曲げモーメントの最大値が小さくなる。
■等分布荷重が作用した場合の単純梁と両端固定梁の曲げモーメント図も比較してみる。
■この場合も両端が固定されて曲げモーメントを負担できるようになるため、
両端固定梁の曲げモーメント図は、単純梁の曲げモーメント図の両側を引き上げた形になる。
■数値を確認すると中央の最大値よりも両端部の曲げモーメントの方が大きな値になる。

解説

両端を固定して曲げモーメントを負担できるようにすると、
単純梁よりも曲げモーメントの最大値を小さくできる。
曲げモーメントの最大値に応じた断面形状にしようとすると、
両端固定にした方が、梁の断面を小さくできる。

上からの荷重に対して、単純梁は下側が引張なのに対して、
両端固定梁は両端部で上側が引張になるので、
そのことへの留意が必要である。
鉄筋コンクリートやプレストレストコンクリートのような
引張側を補強する意図を持って設計されるものの場合、
その点について留意しておくことが特に重要である。

連続梁

支点の箇所で分かれずに連続してつながっている梁を連続梁と呼ぶ。
単純梁を単に並べた場合と連続梁とでは、梁の曲がり方が異なる。
曲がり方が異なることにより、生じる曲げモーメントがどのように異なるのか?
曲げモーメント図の違いから読み取ることができる。
https://youtu.be/1a9VeKEXohM

ナレーションのない動画の補足

■まず、単純梁を並べた場合の曲げモーメント図を描く。
単純梁を並べただけなので、支点の部分でのモーメントの値は0になる。
■支点の箇所でも材がつながっている連続梁について考える。
支点の箇所で隣の梁と固定されている形になるため、
両端固定梁のように支点部分では上側が引張になる。
■支点部分で上側が引張になる分、曲げモーメント図は支点部分で上に引き上げられる。
■支点部分で上に引き上げられた分、梁中央部の曲げモーメントの最大値は小さくなる。

解説

プレストレスコンクリートは、
圧縮にしか抵抗できないコンクリートに対して、
引っ張られる側にあらかじめ圧縮の力を加えておく工夫がなされている。
一般に、単純梁として使用することを前提にして下側が引張になる想定でつくられている。
そのため、上側が引張になる連続梁となるような使い方をしてはならない。

連続梁の曲げモーメント図でモーメントが0になる付近をピンにする方法がある。
そのような梁はゲルバー梁と呼ばれていて、計算が楽なるという利点がある。
ピンの位置のモーメントの値が0であることが明らかなので、
それに応じて部材の断面を決めていくこともできる。