「しくみをみよう」構造目線

構造力学の教科書 第2回 寸法効果 応力度 ひずみ度

寸法効果

同じ形のものでも、長さ(寸法)が異なれば、面積と体積との比率が異なる。
相似であるからといって同じように考えてはいけない。
小さな模型でしっかりしていても、大きなサイズでつくるとうまくいかない場合がある。
寸法効果を考える必要がある。
https://youtu.be/5S-vXC95l_c
音読さんでナレーションを加えた動画はこちら→https://youtu.be/t49IM1KKxIY

ナレーションのない動画の補足

■面積は長さの2乗、体積は長さの3乗である。
■同じ形のものの長さ(寸法)を10倍にした場合のことを考えてみると、
面積は100倍、体積は1000倍になる。
■元の大きさのものAと長さを10倍にした大きさのものBを比べると
体積と面積の比率が異なる。
Aが10倍なのにBは100倍になる。
■面積と体積の比率が異なれば、
その性質も大きく異なる。
体積が重量に比例すると考えると、大きなものほど面積に比べて重量が大きなものとなる。

解説

動物の身体から熱が放出される。
表面積が大きければ、より多くの熱が放出される。
サイズ(寸法)が大きな動物ほど、重量に比べて表面積の割合は小さい。
逆に小さな動物ほど、表面積の割合は大きくなる。
そのため、小さな動物ほど身体から熱が逃げやすい。

サイズ(寸法)が大きな動物ほど、重量に比べて、体の各部分の面積の割合は小さい。
骨格や筋肉の面積の割合も小さくなる。
サイズ(寸法)が異なれば、さまざまな部分の比率、プロポーションも変わらざるを得ない。

模型と実物が相似系であっても、このような条件が異なる。
小さな模型の場合には、重量に比べて、接合部分の面積の割合が大きくなる。
それにより、しっかりしたものになるが、同じプロポーションで大きくすると、
その割合が異なることになり、ぐらぐらしたものになったりする。

演習

もし、自分自身が一寸法師ぐらいのサイズになったとしたら、という仮の話。

日頃、茶碗一杯のご飯を食べてエネルギーを得ているとした場合、
一寸法師になった自分は、
自分の体に対して同程度の大きさの茶碗でご飯を食べるものとして、
何杯ぐらい食べなければならない?

応力度

材料への力の負担の大きさは、加えている力の大きさだけでは判断できない。
そこで応力度というものを考える。
https://youtu.be/gaz73CZuic8
音読さんでナレーションを加えた動画はこちら→https://youtu.be/Y25dHB0NsOU

ナレーションのない動画の補足

■力Pが加えられる材料の断面積をAとする。
■加えられる力をPを断面積Aで割ると、
単位面積あたりの力の負担が計算できる。
■単位面積とは、1mm2とか1cm2のことである。(2はここでは全角になっていますが、上添字、2乗の意味です。)
mm, cm, mのどれを使うかは、その場面次第で都合の良いものを選ぶ。
■この単位面積あたりの力の負担を示すものを応力度と呼ぶ。
単に応力と呼ぶこともある。
■応力度の単位は力の単位Nやk Nを面積で割ったものになる。
これは圧力と同じなので、Pa(パスカル)でも表すことができる。

解説

応力度や応力の英語はstressである。
精神的な負担を意味するストレスは、
もともとは力の負担を意味するstressのことである。

材料の強度試験を行うと
さまざまな材料の強度が分かる。
この材料強度は、応力度と同じように単位面積あたりの力の大きさで示される。

たとえば、ある棒がどれぐらいの力で引きちぎれるかを計算したければ、
その棒の素材の材料強度にその棒の断面積を掛け算すれば求めることができる。

演習

5mm角のヒノキ棒は、どれぐらいの力で引きちぎることができるか?
ヒノキの引張強度を16.2N/㎟で計算してみる。

演習


タマゴロウの体重は600N
丸鋼にぶら下がるとき、丸鋼の直径は何ミリ以上必要か?

ご参考まで

材料の特徴的な数値の一覧表を貼っておきます。
強度の数値で、木材は応力によって異なるので引張と曲げの2種類を記載しました。

材料比重強度剛性
N/㎟kN/㎟
べいまつ0.42引張17.710.0
曲げ28.2
ひのき0.37引張16.29.0
曲げ26.7
すぎ0.32引張13.57.0
曲げ22.2
かし引張2410.0
曲げ38.4
鋼材 SS4007.9降伏点235205.0
コンクリート2.41822.0

ひずみ度

よく伸び縮みしたかどうかは、
ただ見かけの伸び縮みの量で判断してはならない。
元の長さを考慮する必要がある。
ひずみ度というものを考える。
https://youtu.be/mM7XDu2tx5M
音読さんでナレーションを加えた動画はこちら→https://youtu.be/4z4jIwBit2I

ナレーションのない動画の補足

■断面積が同じ大きさで、長さが1mの棒と2mの棒を同じ力で引っ張ったとき、
1mの棒が0.5cm伸びたとすると、2mの棒は何cm伸びるか?
■引っ張る力と同じ大きさの力の負担が、
棒の途中のどの部分にも生じている。
■1mが0.5cm伸びるのであれば、2mの場合は1m2本がつながった状態なので、
0.5cm伸びる棒が2本になるということで0.5×2=1.0cm伸びる。
■伸びた長さを元の長さで割ると、1mの棒も2m棒も0.005になる。
■元の棒の長さに関わらず、伸びた比率が計算できる。
この比率をひずみ度と呼ぶ。
■長さを長さで割算した比率なので、ひずみ度の単位はない。
単位のことを次元と呼ぶこともあるが、ひずみ度は無次元量である。

解説

ひずみ度の英語はstrain

縦に引っ張って伸びるとき横方向では縮む。
その反対に縦に縮めると横方向には伸びる。
この伸びと縮みの比率はポアソン比と呼ばれている。
(Poisson’s ratio)

応力度-ひずみ度 曲線

応力度とひずみ度の関係を示すグラフは、応力度-ひずみ度曲線と呼ばれている。
応力度-ひずみ度曲線から、その材料のさまざまな力学的な性質を読み取ることができる。
https://youtu.be/_RZGB_iv6bc
音読さんでナレーションを加えた動画はこちら→https://youtu.be/nAENmDDDzFE

ナレーションのない動画の補足

■応力度とひずみ度が比例の関係にあるときには、
グラフは直線で描ける。
■このグラフの傾きがその材料の硬さを表す。
傾きが急であれば硬く、緩やかであれば柔らかい。
グラフの傾きを示す係数はEで表す。
このEをヤング係数と呼ぶ。(T.Young)
■ヤング係数Eが大きな材料ほど硬い材料であるといえる。
応力度とひずみ度を関係づけるヤング係数の単位は、
ひずみ度が無次元量であるため、応力度と同じ単位である。
■あるところまでは比例の関係であっても、あるところからは比例にならない。
比例の関係である間は、力を抜くと元に戻る。この性質を弾性と呼ぶ。(フックの法則)
比例の関係でなくなったあたりから後は、力を抜いても元に戻らない。この性質を塑性と呼ぶ。
■弾性から塑性に切り替わる点を降伏点と呼ぶ。
力が加わっても元に戻るようにするためには、
降伏点を超える応力度を生じさせないように設計しなければならない。
■グラフの高さからその材料の強度を読み取ることができる。
高さが高ければ高いほど、強い材料であるといえる。
■さらに最大強度にも耐えたのちでも粘り強い材料であれば、
引き続き耐えてグラフは右につながっていく。
最大強度に達してすぐに破壊する材料は脆い材料である。
最大強度に達したあとも引き続き耐える材料は、
粘り強い材料である。この粘り強さのことを靱性(じんせい)と呼ぶ。
■最大強度に達してすぐに破壊してしまうことを脆性(ぜいせい)破壊と呼んでいる。

演習

材料の強度を比重で割ったものを比強度と呼ぶ。
木材(たとえばヒノキ)、鉄、コンクリートの比強度を計算して比べてみては?