「しくみをみよう」構造目線

構造力学の教科書 第12回 座屈

座屈 その1

ある大きさ以上の圧縮力が加わったときに、細長い材が突然曲がる。
この現象を座屈と呼んでいる。
オイラー(Leonhard Euler)の座屈荷重の式を紹介する。
ナレーションを加えた動画はこちら→https://youtu.be/sa2CaMDbxDk

動画の補足説明

■細長い棒の両端に圧縮力を加えたときに、両端の力がほんの少しずれただけで、棒は曲がる。
この現象を座屈と呼ぶ。
棒が曲がった状態での力の釣合式から、どれぐらいの力で座屈するか求めることができる。
■1700年代にオイラー(Leonhard Euler)が座屈荷重を求める式を導いている。
細長い棒が曲がる座屈現象をオイラー座屈と呼んだりする。
■材料の硬さを示すヤング係数Eと断面の形による曲がりにくさを示す断面2次モーメントI、
この2つを掛け合わせたEIを曲げ剛性と呼んでいる。
座屈荷重は曲げ剛性に比例する。
曲げ剛性が2倍になれば、座屈荷重も2倍になる。
■座屈荷重は座屈長さの2乗に反比例する。
座屈長さが2倍になれば、座屈荷重は1/4になる。
■座屈長さは、座屈する形のカーブを描く材の長さである。
単に材の長さで決まるものではなく、材端の接合状況によって異なる。
■座屈長さは、座屈する形に応じて材の長さの何倍であるかが決まる。

解説

座屈荷重を求めるためには、
断面2次モーメントを計算しておかなければならない。
このときに使用する断面2次モーメントは、
部材の曲がりやすい方向(弱軸まわり)のものでなければならない。

細長い棒が曲がる現象以外にも、突然、材が変形する座屈現象がある。
薄い板が曲がる局部座屈や
梁幅に対してかなり梁せいが大きい場合に上からの力に対して梁が横方向に曲がる横座屈などがある。

演習

椅子の脚の寸法を検討してみてください。

脚は座板には剛接合されていて、
床面とは自由端の片持ちの形式であるものと想定する。
円周率πは、とりあえず3.14で構わない。

まずは断面は変えずに、どの程度まで長くできるかどうかの検討。
(座り心地などは、とりあえず無視)

 

 

 

次に長さはそのままで断面を検討する。
とりあえず正方形の断面だとして検討してみてください。
(接合部の仕様の検討などについてはとりあえず無視)

 

 

 

 

座屈 その2

単位面積あたりに生じる力の負担を応力度と呼んでいる。
座屈を生じさせる座屈荷重を断面積に割ると座屈応力度を求めることができる。
ナレーションを加えた動画はこちら→https://youtu.be/xzCmdeFesx4

動画の補足説明

■オイラーの座屈荷重の式で求めることができる座屈荷重を断面積で割って座屈応力度を求める。
■できるだけ単純な式になるようにいくつかの記号を用いる。
■断面2次モーメントIを断面積で割った値の平方根を断面2次半径iと呼ぶ。
単位はcmやmmなど長さの単位である。
■座屈長さを断面2次半径で割ったものをλ(ラムダ)で表すことにする。
このλを細長比と呼んでいる。
■細長比は、その名の通り、細長い材ほど大きくなる。
■座屈応力度は、円周率π、材料の硬さを示すヤング係数E、細長比λの3つだけで決まる。

解説

細長い材料に圧縮力が加わるときの断面寸法を検討する際には、
その材料の圧縮強度ではなく、座屈応力度をボーダーラインの目安にしなければならない。