「しくみをみよう」構造目線

「うけとめていく」デザイン

利他は「うけとめていく」デザインのキーワード

参考図書
・思いがけず利他 中島岳志 著 ミシマ出版 2021年

『思いがけず利他』は、2020年に「利他プロジェクト」という研究をスタートさせた
中島氏が社会がコロナ危機に直面する時期に書かれた本です。
「うけとめていく」デザインを考える上で「利他」は重要なキーワードの一つであると思います。

利他プロジェクトのサイトのURL→ https://www.fhrc.ila.titech.ac.jp/project/
興味深い対談の動画へのリンクなどもあります。

NHKの「のど自慢」という番組に対して、
『バック・ミュージシャンたちは、歌い手を支配しようとはしません。リズムが狂っていると、矯正するような演奏をするのではなく、その人のリズムに合わせます。』
ということについて『これこそが利他的な演奏なのだと、私は思います。』と中島が紹介している。
(とても残念なことに番組の方針が変更されてバック・ミュージシャン不在での放送されるようになってしまったが)
これぞまさしく、「うけとめていく」演奏なのだといえる。

中島は『利他が起動するのは「与えるとき」ではなく「受け取るとき」です。これは重要なポイントです。』
と強調して、そのことを示す事例を紹介した上で、
『受け手にとって大切なのは、「気づく」ことです。私たちには、過去から多くの言葉や行為がやって来ます。しかし、残念ながら、そのほとんどを見逃し、つかみ損ねています。』と主張している。

『私をめぐる「偶然」を、意志を持って引き受けることで、私を生きることができます。私を生きることは、私という偶然的な被贈与性を受け入れ、運命を能動化する作業です。』という中島の言葉は、
「うけとめていく」デザイン宣言であるとして不可分ないように思える。
その後に続く中島が掲げる一文は『受動こそが能動』である。
まさしく「うけとめていく」という行為を説明する一文だといえる。

***************************************************************
「うけとめていく」デザインをキーワードにして、考えていることを少しずつ記述していきます。
その前書きはこちら→ 試論:「うけとめていく」デザイン連携活動

「うけとめていく」デザインを英語に翻訳する場合
次のようなフレーズが適切であると考えています。
“Design that embraces the way things are”

関連記事