参考図書
・わからない世界と向き合うために 中屋敷均 ちくまプリマー新書447 2024年
『わからない世界と向き合うために』の著者は、遺伝子やウィルスに関する本も書かれている細胞機能構造学の研究者である。思い通りにならない「わからない世界」で若い人が生き生きとした人生を送ることができるようにとの願いを込めて書いたと、その前書きにある。
本の中で、桜の名所で花見のシーズンに咲き誇るソメイヨシノについて触れられている。挿木や接ぎ木で増えるソメイヨシノはクローンであるとのこと。遺伝子的に均質で病害虫に弱く、50年から80年で枯れてしまうことが多いと書かれていて、この話からの類推で、経済合理性に一辺倒の考え方の危険性について述べられている。
ヒトと他の動物との大きな違いとして、「想像力」の有無があることを紹介した先に、「わからない」ことと向き合うことの重要性が、戦争と平和、コロナワクチンの安全性などの具体的なことがらを例にして説かれている。科学的であるか非科学的であるか、科学でわかる真理とは何か、迷惑をかけないという考え方は正しいのかどうかなど、日々生きていく上での考え方のもとになる要点を教えてくれている。「わからない世界」の中での偶然についての考察が示され、人に制御できないものがあり、それらを受け入れるほかないという立ち位置が重要であることが示されている。「人事を尽くして、天命を待つ」という言葉の示す意味をあらためて考えさせてくれる。
この本には「うけとめていく」デザインが重要であることの根本的な理由が示されているように思える。
「うけとめていく」デザインをキーワードにして、考えていることを少しずつ記述していきます。
その前書きはこちら→ 試論:「うけとめていく」デザイン連携活動
「うけとめていく」デザインを英語に翻訳する場合
次のようなフレーズが適切であると考えています。
“Design that embraces the way things are”