「しくみをみよう」構造目線

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不純異星行為論 005

計算できる形におきかえる

予想することがらを計算できるモデルを適用して
的確に数値化できれば、それに基づいて的確に判断できる。
このときの大前提は、的確に数値化できればという点にある。

建築構造を対象にしたとき、
まず初めに考えなければならないことは、
荷重を数値化することである。

建物に加わる力のことを荷重と呼んでいるが、
想定すべき荷重はさまざまである。

構造物そのものの重さ
床や屋根に載るものの重さ
強い風を受けたときの風圧力の大きさ
地震で揺れたときに構造物に生じる影響

特に自然現象により、
時おり大きな影響を及ぼす荷重を数値化する必要に迫られる。

どれほどの台風や突風に遭遇するか?
どのような地震に遭遇するか?
正確に予測することは困難である。
にも関わらず、数値化された荷重を設定しなければならない。

さて、この難問にどのような姿勢で向き合うか?

そのために必要なのは、
実際に起こることを精緻に予測するというよりも、

ある程度の安全性を見込んだ上で、
これぐらいのものを想定しておこうという
割り切った姿勢で臨むことである。

不純といえるかもしれない割り切りのもとで、
安全性を確保する態度が求められる。

その割り切りは、
多分大丈夫だろうなどという思い込みであってはならない。
また、
結論ありきで、冷静な状況判断を怠ってもならない。

そういうあたりまえのことを抜きにしても、
精緻さを追い求めることについては、懐疑的であった方が良い。

条件において不確かなことがらがそもそも少なかったり、
不確かな要因をできるだけ排除することができれば、
より的確な数値化が可能となる。
でも、そう単純明快には読み解けないものであった場合には、
かなりの割り切りがないと判断することすらできなくなる。

コンピュータの処理能力が向上して、
構造計算を行うアプリケーションソフトの性能も向上したことにより、
さまざまな構造計算を精緻に行えるようになってきた。
構造計算ソフトには、荷重や構造物の形など条件になるものを入力する。
計算結果として、生じる力の負担や変形の大きさなどが数値として得られる。
構造計算ソフトは、入力がなされて出力を返すという機能を持った箱である。

箱の中は精緻にできている。
何を入力して、何が出力されているのか?
それが一番考えておかなければならない問題である。

何を入力するのか?

たとえば地震波の場合、ある想定した地震波を入力する。
必ずしもその土地でその地震波の影響を受けるかどうかはわからない。
いくつかの複数の地震波でシミュレーションをして、
それらの出力結果で判断することもある。
それら複数の地震波も実際にその土地で発生する地震波そのものではない。

箱の中身の計算は精緻に行われる。
でも、入力する地震波は精緻に予測されたものではない。

何を入力して、何が出力されているのか?
箱の中身の計算方法が精緻であっても、
計算の前提に大いなるあいまいさが含まれていることを忘れてはならない。

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